米が金・銀を走らせる
米が金・銀を走らせる
江戸史講義
大石慎三郎 著 / 津本陽 著
定価: 1,320円(本体1,200円+税)
江戸期、日本全体に銭というベースがしきつめられる。江戸を中心とする経済圏域には金、京・大阪を中心とする経済圏域には銀が基本通貨として配されるという通貨構造。紀州家出身の治政以後、西国の銀が反逆する。生態学的な観念から言えば理想的に構築された閉鎖社会、その内部に生成した近代をめぐって、新しいタイプの剣豪小説の書き手、津本陽と、社会経済史的な視点から江戸時代の社会の諸相を研究する大石慎三郎が語る。
津本 幕府が腐敗したとか何とかいって、幕末に薩長とかああいう対立勢力が、尊皇に名を借りて台頭してくる。それは原因はどういうところにあるんでしょう。幕府もそのころは赤字経済になっていたんですか。
大石 幕府はだいたい東国政権で、東と西とは経済圏が違うわけですね。金の経済圏にできた政権が銀の経済圏も含めて統一してしまうのが江戸時代ですね。で、銀の経済圏が吉宗の時代ぐらいからだんだん反逆してくるんです。私は、結局幕末の政争は銀の経済圏の金の経済圏に対する反逆だと思うんです。