哲学に何ができるか
哲学に何ができるか
現代哲学講義
廣松渉 著 / 五木寛之 著
定価: 1,056円(本体960円+税)
近代の主観-客観図式のパラダイム=物的世界像を超克する、事的世界観とは何か。ゲシュタルト・チェンジの今日に、哲学は諸科学や芸術といかなる関係を切り結ぶのか。現代文学の現場からする作家の根源的な問いかけを受け、マルクス主義、実存主義、分析哲学から構造主義・新哲学までをエピステーメーの変換の中に位置づけ、疎外論を越えて物象化論と共同主観性の地平に、新たな世界観の構案を提起する廣松哲学体系のプロレゴーメナ。
五木 実存主義の中に、いわば精神の貴族性のようなものを感じるんですよ。そうすると、そこにはあるヒロイックな心情が生まれてくる可能性がある。実存主義を信奉してレジスタンスで死ぬこともできれば、逆に実存主義の思想に支えられてナチの突撃隊員でもありうるということがあるのではないか。
廣松 たしかにその通りだと思います。マルクス主義以外はアカデミズム哲学で、アクチュアルな現実にコミットしないというのは哲学の体系的内容の話でしてね。哲学といえども、歴史的・社会的な現象のひとつですから。