イギリスの忘れられた子供の本

  • イギリスの忘れられた子供の本
判型:四六判 / ページ数:280ページ / ISBN:9784255013589 / Cコード:C0098 / 発売日:2023/12/26

イギリスの忘れられた子供の本

鶴見良次 定価: 2,970円(本体2,700円+税)

在庫: 在庫あり

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「イギリスから豊かな暮らしと生き方を考える」ことをテーマにした
隔月刊誌『英国生活ミスター・パートナー』2024年4月号(3/8発売)に
書評が掲載されました!
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イギリスの児童文学にもイギリス文学史で言われる「キャノン(正典)」による「偉大な伝統」が形成されてきた。いわゆる「名作」の歴史である。

それに対し、本書が目指すのはそれとは異なるもう一つの「イギリス児童文学史」の試みである。

すなわち、「名作」として今日まで知られているもの以外に、どのような本が、どのような時代に、どれほど、どのように読まれたかが問いとなる。

膨大な歴史資料から解明するイギリス近代の子供の読書世界。

目次

■序 論
イギリス児童文学の「偉大な伝統」
イギリス帝国の子供の本
忘れられた子供とその本
児童文学の現代的概念
論述の方針

■第一章 子供用の聖書の誕生
――ジャン・フレデリック・オステルヴァルド『簡約聖書物語』([一七一二年あるいはそれ以前])他
子供用の聖書  
子供に聖書を読ませることの是非
ジャン・フレデリック・オステルヴァルド『簡約聖書物語』
ジョゼフ・ハザード刊『簡約 旧約・新約聖書物語』(一七二六)と著者不詳『子供の聖書』(一七六三)
イギリス帝国の子供の聖書

■第二章 ピューリタン後裔の子供の讃美歌
――アイザック・ウォッツ『聖なる歌』(一七一五)
「良き教えの本」の伝統
最も美しい讃美歌の作者
讃美歌の教育的効用  
ピューリタン的な要素――ジェイムズ・ジェインウェイ『子供のための遺言』(一六七二)とエイブラハム・チア『子供のための鏡』(一六七三)
『聖なる歌』のトラクトとその国際的流布
宗教的な児童書の役割の終焉

■第三章 イギリス帝国の子供の物語
――ジョン・ニューベリー刊『靴二つさんの物語』(一七六五)とその続編(一七六六)
子供のために書かれた最初の写実主義的小説
妖精物語的世界観と近代的市民道徳
魔女と女教師
女教師が主人公の童話の誕生
弟トムの冒険物語
イギリス帝国の辺境への憧れと地理
慈善と冒険――二つのイギリス近代  
女の子と男の子の立身出世物語

■第四章 「学者犬」の童謡
――セアラ・キャサリン・マーティン『ハバードおばさんとその犬の滑稽な冒険』(一八〇五)他
擬人的な動物の童謡
『ハバードおばさんとその犬』とその原作者
ハリス版とキャトナック版の異同
『ハバードおばさんとその犬』後編と続編(一八〇六)
『トロットおばさんとその猫』(一八〇三)
大道芸「学者犬」としてのハバードおばさんの犬
ジョージ・クルックシャンク《犬の時代》(一八三六)
ハバードおばさんとその犬のイギリス近代

■第五章 子供の本における残酷性
――ペロー童話、グリム童話の受容小史
セアラ・トリマー『教育守護者』(一八〇二-〇六)の妖精物語批判
フェリックス・サマリー『伝承妖精物語集』(一八四五)におけるペロー童話の改変
英訳『グリム民話集』(一八二三、二六)における改変
ジョン・フォックス『殉教者の書』(一五六三)とメアリー・マーサ・シャー
ウッド『フェアチャイルド家物語』(一八一八)の残酷性
残酷性の忌避/残酷性の利用  
 アミーリア・オーピー『黒人の嘆き』(一八二六)の残酷性
残酷性と児童文学の近代化

■第六章 妖精物語論争と近代的児童文学観の成立
――『ジョージ・クルックシャンクの妖精文庫』(一八五三-六四)
妖精物語の挿絵画家としてのジョージ・クルックシャンク
妖精物語論争の顛末――クルックシャンク、ディケンズ、ラスキン
妖精物語と民俗学
妖精物語の二つの神聖化――近代的児童文学観の成立

■第七章 堕落しかつ無垢な子供たち
――チャールズ・ディケンズの「子供の文学」
「子供の文学」と「児童文学」  
ディケンズにおける忘れられた子供の本
『大いなる遺産』(一八六〇-六一)のピップの罪悪感
罪深い/有罪の、無垢な/無罪の
イギリス帝国の堕落しかつ無垢な子供たち

■第八章 子供の現代生活の物語
――ロバート・バーンズ挿絵『ストーリー=ランド』([一八八四])他
「絵も会話もないなんて」
挿絵画家ロバート・バーンズ
農村画とファンシー・ピクチャーの系統
シドニー・グレイ『ストーリー=ランド』の物語と挿絵
宗教的トラクト協会の児童書  
バーンズ挿絵版のウォッツ『聖なる歌』([一八八五])とバーボールド夫人『子供の散文の讃美歌』(一八六五)  
メアリー・ルイーザ・モルズワース『ロビン・レッドブレスト――女の子のための物語』(一八九一)他
大衆文化における子供の現代生活の画家  

■結 論
あとがき

初出一覧
図版出典
参考文献
人名索引

著者紹介

  • 鶴見 良次(つるみ・りょうじ)
    筑波大学大学院博士課程文芸・言語研究科単位取得満期退学。
    ケンブリッジ大学ダーウィン・カレッジ客員研究員などを経て、現在、成城大学文芸学部英文学科教授。
    博士(文学)。英語・イギリス文学専攻。著書に『マザー・グースとイギリス近代』(岩波書店 日本児童文学学会特別賞)、
    『イギリス近代の英語教科書』(開拓社)、『世界・日本 児童文学登場人物辞典』(項目執筆 玉川大学出版部)、
    The Cambridge Guide to Children’s Books in English(項目執筆 Cambridge University Press)ほか。

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