中枢は末梢の奴隷
中枢は末梢の奴隷
解剖学講義
養老孟司 著 / 島田雅彦 著
定価: 1,320円(本体1,200円+税)
解剖というあくまで具体に係る視点から、形態・機能・発生・進化を貫く論理を解読する。「発生から見たモルフォロジー」「何が自然科学か」「形態か機能か」「剰余と欠如」「死体の現実感、言葉の現実感」の各章に、養老孟司による特別講義≪脳への無限の回路≫を付す。ゲーテ、19世紀の比較解剖学を経て、現在注目されている≪形の科学≫まで、形態学が認識論と遭遇する。死体を蝶番に解剖学者と小説家の結び合う異色対談集。
養老 (……)耳とこの揉み上げという頭の延長部分の間に、ちゃんとヌードの部分がある。あれは境界ではないかと思うんです。それは、人間から髭がなくなってくる話と関係しているんじゃないか、と思うんです。
島田 ということは、逆に言うと、いまの毛髪と毛髪のない部分との境界というのは、脳髄の構造と対応しているということですか。
養老 ひょっとしたらそれに似た意味があるんではないか、とも思います。つまり、頭を作っている要素が、そこで境界を作っているんじゃないか(……)