神の意志の忖度に発す
神の意志の忖度に発す
科学史講義
村上陽一郎 著 / 豊田有恒 著
定価: 1,056円(本体960円+税)
科学の歴史は直線的・累積的なものであったとする「発明・発見物語」としての科学史観がなお支配的である。しかし、「キリスト教が科学精神を生み出す」――神が与えた秩序を読み取りうるのは、神の理性を分ち与えられた人間だけである、としたらどうであろう。「神の意志を忖度する」ことと科学精神の深いつながりを、一切の勝利者史観を排し、各文化と各時代の等価性を前提に論じあい、科学革命、そして制度化された科学に説き及ぶ。
村上 何か決定的な、最終的、究極的な原理、これであるというものに還元していくという操作がやはり科学の中にはあるようですね。生物学における今日で言えばDNAとか、物理学における素粒子論。とにかく最後にすべてを解決してくれる、これだというものがあって、そこへ全部が収斂していく。
豊田 収斂していかないと気がすまない。たしかにダーウィンとか、フロイトとか、そういう一つのドグマを立てて、それが支配的になるというようなのは、日本人の思考からは出てこないですね。