私は本当に私なのか
私は本当に私なのか
自己論講義
木村敏 著 / 金井美恵子 著
定価: 1,056円(本体960円+税)
書くことのはじまりから〈私〉を問う作家金井が、自己と他者の析出を、差異が差異を差異化する過程、として解く木村に訊ねる。精神病理学の先端が、現代哲学の基底に導かれる。
第一講 煩わしい肉体と文体――第二課 自己とは差異形成の作用――第三講 妄想の生命、時間の喪失――第四講 小説の時間、夢の時間――第五講 「子宮が書く」ということ
木村 「ふと」と「いきなり」とはやっぱり違うんじゃないですか。「私はふとここにいる」ということはいえても、「私はいきなりここにいる」というのは不可能ですからね。
金井 「私がふとここにいる」ということ、「ふと生まれてきてふとここにいる」ということは分かるんですけど、もう一つなんか不意打ちというか、「いきなり」というか、そういう感じで「ふとここにいる」ということに気が付くとか、そういう瞬間というのはあるんじゃないでしょうか。
木村 その気が付く付き方はそうですね。「いきなり」気が付くんです。