闇のなかの夢想
闇のなかの夢想
映画学講義
埴谷雄高, 著 / 小川国夫 著
定価: 1,056円(本体960円+税)
映画とは論理的に進行する非現実、首尾一貫した白昼夢、宇宙のつぶやき。人工の闇の中で光の一点に向う目、趨光性が、共同性を個人性に転換する。エンジン、リュミエールに始まり、グリフィス、チャップリン、アベル・ガンス、オーソン・ウェルズなど世界の巨匠たちのおびただしい映画の群を潜って、19世紀の文学に代る、芸術としての映画が拓いた地平を探る。
小川 するとレーガン氏はケネディ家から流れ出た資本のやっかいになっていた時期があるんですね。(後略)
埴谷 そのケネディが賭けた時代に、ヨーロッパからの新しい移民、その大半はユダヤ人ですけど、これがまたケネディ同様、「あ、映画というのは儲かるものだ」と解って、カール・レムムルはユニヴァーサル、さきのゴールドフィッシュはゴールドウィン、そして、パラマウントはアドルフ・ズーカーがつくる。ま、アメリカというのは全部移民ですけど、昔の移民と19世紀と19世紀終りから20世紀はじめへかけての移民とは差があって……。