音を視る、時を聴く
音を視る、時を聴く
哲学講義
大森荘蔵 著 / 坂本龍一 著
定価: 1,056円(本体960円+税)
クラシックから出発した前衛作曲家にして、YMO(当時)のスーパースターである坂本龍一氏が、論理学から存在論にいたる哲学の全域を手中に収め、新しい哲学のホリゾントを拓こうとしている大森荘蔵氏に挑む。音の現場から聴覚の問題圏に切り込み、感覚、時間、イメージ、論理、感情、意志などのプロプレマティークをひき出す。こうして、世界の数学化を超える方法が開示されるのである。
坂本 赤もたとえば橙色に変わってきますね。そうすると連続的に変化して、どこで区切るかという……。
大森 それがさっきの、鼻とほっぺたの境目ですね。
坂本 それは文化的な……?
大森 だと思います。(中略)たとえばパターン認識ということがあります。つまり赤と判断できるものがある。今、赤であると判断するある状態がある。それが目から飛び込んできて脳に入ると、「黒じゃない、黄色じゃない」といって、脳がデータ処理した結果赤である、と決めるんじゃない。