ひとなぜ怒りを謳う
ひとなぜ怒りを謳う
ナショナリズム講義
平岡昇 著 / 安岡章太郎 著
定価: 1,056円(本体960円+税)
ナショナリズムは、共同の運命を背負ったもののエモーションに根ざしていて、ルサンチマンのゆたいを〈民族〉という鋳型に流しこんだものなのかもしれない。とはいえ、かつてデモクラティズムとパトリオテイズム(祖国主義_)とは、ひとつの人格に同時に生棲できたのだ。フランス革命にナショナリズムの祖型をさぐり、尊皇攘夷の運動から、北一輝や三島由紀夫まで、この奇妙な感情の病理の動態をとらえる。
安岡 ナショナリズムというのはあるがごときなきがごときものですからね。もしも国家が世界からまったくなくなったとしても、また別の問題に立つ争いが必ず起こりますよ。ナショナリズムにかわるべきもの、ある種の集団的な怒りの感情とでも言うべきものは残りますよね。
平岡 別の言葉で言えば、ルサンチマンね。日本だって30年間ぐらい、朝鮮に対して植民地政策をとったでしょう。あれからくる朝鮮のほうのルサンチマン、これは絶対に消えないだろうし。