フィクションとしての裁判
フィクションとしての裁判
臨床法学講義
大野正男 著 / 大岡昇平 著
定価: 1,056円(本体960円+税)
自然法的正義は、ときに現実批判としてはたらき、ときに実定法を擁護すべく言いたてられる。価値といい正義といい真理というも、すべて〈制度〉にほかならない。文学裁判、事実認定、誤判などのテーマを追いながら、一般理論や立法のための法律学ではなく、裁判という場での法の現実態を描き出す。そして、裁判の中心をなすフィクション、事件の流れの中に生じざるを得ない空白を埋める、あのフィクションが、法律と文学を通底させるのである。
大野 裁判が、論理という歯止めを使いながらも、常に論理からすこしずつはみ出してるところがあるからではないか、あるいは逆にそれが論理を生み出していっているのではないか、それが人間の営みとしての裁判、あるいは訴訟なのであって、法律学とはやや違うものではないか。
大岡 伺っていると、フィクションというものが裁判の中心にもあるのであれば、われわれは同じ領域で人間というものにかかわってるわけで、裁判というものが、こんなにわれわれと同じ場所で悩んでるのかと驚きました。