光があった
光があった
地中海文化講義
下村寅太郎 著 / 小川国夫 著
定価: 1,056円(本体960円+税)
神話と哲学のオリジンを明らめて思索する哲学者と、イコンやカテドラルや廃墟に感応する作家が、ギリシャ思想とキリスト教のそれとの違い、ルネサンスとは何かなどを問う。光たわむれる地中海に文明の交響詩がこだまし、アリストテレスの自然学からケプラー、ガリレオ、ニュートンの科学への途が、アインシュタインにまでつらなるのが見える。あるいは、黄昏の国スペインをへめぐり――こうして精神史の〈舞台〉がしつらえられる。
小川 廃墟美のいわば正反対にある観念がギリシャ人の美意識だったという感じがしますね。そこで、そのギリシャ人の精神の基本はどういうふうに考えられますか。
下村 ギリシャには廃墟美などなかった。ギリシャ人の本質は彫塑的性格です。ギリシャの哲学も思想の彫刻といっていいか、彼らが努力して概念を定義したのも概念の彫刻ですわね。われわれには一番乏しいものですね。造型的ということはギリシャ人の最も根本的な特色で、だから彫刻がギリシャの芸術の典型ですね。