おしゃべりから始める 私たちのジェンダー入門

  • おしゃべりから始める <br>私たちのジェンダー入門
判型:四六判並製 / ページ数:264ページ / ISBN:9784255013398 / Cコード:C0095 / 発売日:2023/06/10

おしゃべりから始める
私たちのジェンダー入門
暮らしとメディアのモヤモヤ「言語化」通信

清田隆之 定価: 1,925円(本体1,750円+税)

在庫: 在庫あり

あのとき悩んだあのことは、全部ジェンダーの問題だったのかも・・?!

◎各メディアでご紹介いただきました◎


この本、お豆腐みたいな本なんです。身近なんだけど複雑な味がする。[…]
読むと健康にもいいというか、心がヘルシーになるような本だと思いました。
―― 永井玲衣さん・哲学者(ラジオ「西川あやの おいでよ!クリエイティ部」)

「男とはそういうもの」で済まされてきたような物事からも目を逸らさず、
自身の感情にしっかりと耳を傾ける。それはすなわち、「男性」に関する固定観念を疑い、それを解体していく行為でもある。
―― セメントTHINGさん(『週刊読書人』)

***

非モテ男性たちのぼやき、仮性包茎に『うっせぇわ』、『おかあさんといっしょ』や母親からの過干渉、ぼる塾、阿佐ヶ谷姉妹のお笑い、ZARDに朝ドラの男性たち、パワハラ、新興宗教、ルッキズム……
ジェンダーを「自分事」として考えるために。
共同通信配信の好評エッセイ「清田隆之の恋バナ生活時評」を大幅加筆。より正直に、言葉の密度高く書籍化。

日々を暮らす中で感じたモヤモヤを、誰かと話しながら言語化していく営みこそ、ジェンダーという巨大にしてつかみどころがなく、それでいて根源的で影響力も計り知れない問題に向き合うためのきっかけになるのではないか。私というミクロの世界と、社会というマクロの世界は、どこかで確実につながっている。――「まえがき」

目次

第1章
〈男〉について考え続けた2年間のこと
恋バナは楽しい。でも、どんどんしづらいものになっていった/痴漢被害に憤る女、痴漢冤罪に怯える男/男たちは自分のことをわからないままでいいのか…

第2章
コロナと育児と生活の限界
子どもの成長はあっという間。でも、大人の1年だってそれなりに長い/自分を許してくれない〝リトル清田〞の厳しさ/子どもが風邪をひくと一瞬で詰む日々…

第3章
#stayhomeと令和のエンタメ
朝ドラの弱くて優しい男たち/阿佐ケ谷姉妹に感じた〝男性的〞ではない笑いの感覚/「ガッキーロス」に独禁法まで持ち出す〝ノリ〞の気持ち悪さ…

第4章
心を開いて、清田くん!
恋愛のモヤモヤに潜む政治意識のズレ/「暴力とコミュニケーションが紙一重」の領域で傷つく男性たち/「お茶する」ことの醍醐味、ガールズトークの文化に学んだこと…

著者紹介

  • 清田隆之
    1980年東京都生まれ。文筆業。恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。早稲田大学第一文学部卒。これまで1200人以上の恋バナに耳を傾け、恋愛とジェンダーをテーマにコラムを執筆。朝日新聞be「悩みのるつぼ」では回答者を務める。
    単書に『さよなら、俺たち』(スタンド・ブックス)、『自慢話でも武勇伝でもない「一般男性」の話から見えた生きづらさと男らしさのこと』(扶桑社)、桃山商事名義としての著書に『生き抜くための恋愛相談』『モテとか愛され以外の恋愛のすべて』(イースト・プレス)、澁谷知美氏との共編著に『どうして男はそうなんだろうか会議──いろいろ語り合って見えてきた「これからの男」のこと』(筑摩書房)、トミヤマユキコ氏との共著に『文庫版 大学1年生の歩き方』(集英社)などがある。

はじめに−−私たちにはおしゃべりが足りてない

私には、誰かとしゃべりたいことがたくさんあった。暮らしの中で感じた疑問、人間関係の困りごと、メディアで目にした話題に対するモヤモヤ。うれしかったこと、やるせなかったこと、恥ずかしかったこと。ふとした思いつき、おもしろい発見、ちょっとした秘密。積年の恨みとか、後ろめたい欲望とか、SNSでは言えない本音とかも、めっちゃある。そのつど誰かとおしゃべりしながら「わかるわかる!」ってできたら最高だったけど、あの2年間はなかなかそれができなかった。
 本書は、2020年9月から2022年9月にかけ、「共同通信」から全国の新聞の電子版に隔週で配信されていた連載をまとめたエッセー集だ。連載時のタイトルは「清田隆之の恋バナ生活時評」というもので、恋バナ収集ユニット「桃山商事」の一員として、フリーランスの書き手として、コロナ禍を生きる40代の男性として、また幼い双子を育てる親として、日々の生活や時事ニュースなどを通じて考えた「恋愛とジェンダー」の問題を扱うポップでライトなエッセー連載にする……はずだった。しかし、結果から言うと全然そうはならなかった。なぜならこの2年間があまりにハードな毎日だったからだ。
 連載が始まった2020年9月といえば、その前月に辞意を表明した安倍晋三元首相の後任として菅義偉内閣が発足した頃だ。新型コロナウイルスによるパンデミックは引き続き真っ直中で、感染者数が落ち着いたかと思えばまた増え……という上下動を繰り返していた。GoToトラベルが批判されたり、アメリカでバイデン大統領が誕生したり、ワクチン接種が徐々に始まったりして、2021年7月には「本当にやるの?」というムードのまま東京五輪が開幕した。
 個人的な関心事であるジェンダー問題に目を向ければ、SNSで毎日のように様々な議論が繰り広げられており、社会構造に根深く蔓延する性差別に絶望的な気分になったり、我が身を振り返ってゾッとしたり、ひたすら無知や不勉強を痛感したりの日々だったが、とりわけ東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長(当時)による「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかる」発言は社会的にも大きな問題となり、私もいくつかのメディアで意見を求められる機会があった。小田急線の車内で女子大学生を切りつけて殺害しようとした男が「幸せそうな女性を見ると殺してやりたいと思うようになった」と供述した事件は本当にショッキングだったし、著名な俳優や演出家による性加害が次々と告発されたこともまだまだ記憶に新しい。
 そして、私自身の生活や仕事もまさに激動と呼べる2年間だった。双子の子育てが始まって間もなくコロナ禍へ突入し、それまでの暮らしがびっくりするほど一変した。ミルクとオムツ交換がエンドレスに続き、感染対策にも神経を尖らせ、夜泣き対応でまとまった睡眠が取れない状態で日々の生活を営んでいくのは想像以上にハードで、仕事もまったく思うように進まず、子どもたちを乗せたベビーバウンサーを両足で揺らしながら原稿を書いていた。
 緊急事態宣言が明けてから少しずつ親のヘルプも復活し、2021年の4月からは双子を保育園に入れることもできたが、今度は頻繁に風邪をもらってくるようになり、そのつど仕事がストップするというサイクルが始まった。コロナが怖い、いつも眠い、本が読めない、観劇に行けない、友達にも会えない……。桃山商事の活動もままならず、ライフワークのように続けていた恋愛相談も数えるほどしかできなかった。
妻や友人たち、双方の両親、仕事仲間や桃山メンバー、そしてAmazon で箱買いしている栄養ドリンクの力なども借りながらなんとか綱渡りの毎日を生き延び、この2年で桃山商事としての著書『どうして男は恋人より男友達を優先しがちなのか』(イースト・プレス)、単著『自慢話でも武勇伝でもない「一般男性」の話から見えた生きづらさと男らしさのこと』(扶桑社)、澁谷知美さんとの共編著『どうして男はそうなんだろうか会議――いろいろ語り合って見えてきた「これからの男」のこと』(筑摩書房)という3冊の本を出すこともできたが、安倍元首相が凶弾に倒れた2022年の夏、一家でコロナにかかってすべてが詰み、抱えているレギュラー仕事のほとんどから降りた(共同通信の連載もそのひとつだった)。
 この本に収録されているエッセーには、私のそんな2年間が色濃く表れているように思う。テーマは毎回、連載時の担当編集である共同通信社の森原龍介さんとLINEでやりとりしながら決めていた。ジェンダーをめぐる時事問題や育児のこと、そのとき読んでいた本やマンガの話なんかが多めだが、セフレや非モテ、仮性包茎に『うっせぇわ』、『おかあさんといっしょ』や母親からの過干渉、ぼる塾、阿佐ケ谷姉妹、ZARDに朝ドラ、性暴力、パワハラ、選挙、新興宗教……など、扱ったテーマを並べてみるとなかなかにばらばらだ。
 原稿が掲載されるや否や次の回の執筆が始まるという切れ目のないサイクルの中で、つたないジャグリングのような、あるいは自転車操業のような心持ちでギリギリ連載を回していた感は正直否めない。「恋バナ生活時評」という看板は早々に形骸化してしまった気もするし、そのときそのときの興味関心や置かれた状況について書き連ねてきた感じで、全体を貫く何かがあったわけでもない。
 でも、と思う。この激動の2年間は、私だけが味わったものではもちろんない。社会全体が新型コロナウイルスに翻弄され、誰もが生活の変化を経験したはずだ。そのせいか、ごくごく私的な話を書いてきたにもかかわらず、連載時から共感の声をいただくことも少なくなかった。私たちは一人ひとり異なる日常を生きているけど、同じ根っこでつながる土壌に立っていることもまた事実で、それは一体なんなのか……。そこにばらばらのエッセーを一冊にまとめるヒントがあるのではないかと、本書の担当編集である朝日出版社の平野麻美さん、仁科えいさんとともに模索する日々が続いた。そうした中で浮かび上がってきたのが『おしゃべりから始める私たちのジェンダー入門』というタイトルだった。
 私たちにはおしゃべりが足りてない。誰かに話を聞いてもらったり、誰かの話に耳を傾けたりしながら、モヤモヤした思いを言葉にしていく時間が圧倒的に不足している。ここに収録されているのはエッセーで、言わば私の〝ひとり語り〞だ。だから厳密に言えばおしゃべりではない。ついでに言えばジェンダーを学ぶための入門書でもない。しかし、日々を暮らす中で感じたモヤモヤを、誰かと話しながら言語化していく営みこそ、ジェンダーという巨大にしてつかみどころがなく、それでいて根源的で影響力も計り知れない問題に向き合うためのきっかけになるのではないか。私というミクロの世界と、社会というマクロの世界は、どこかで確実につながっている。あのとき悩んだあのことは、全部ジェンダーの問題だったかもしれない。
 さて、少々前置きの長い「はじめに」になってしまった。ここからはこの2年間に書いてきた44本のエッセーが続いていく。それぞれ独立したテーマの文章だが、内容に応じて4つのグループに分類した。2022年から2020年にさかのぼっていく章と、2020年から2022年に時系列で進んでいく章が交互に配置されているが、それはジェットコースターのように乱高下したり、行きつ戻りつの時間感覚で過ごしたりしていた私の2年間をイメージ的に表現したもので、基本的にはどこから読んでもらっても構わない。文章の中の時制は基本的に掲載時のままだが、書籍化に伴って大幅に加筆修正されていたり、それぞれ短い後日談が追加されていたりするので、連載時に読んでくれた方でも改めて楽しんでもらえるんじゃないかと思う。
 まったく無関係のようでいて、意外にどこかでつながっているーー。そんな話が縦横無尽に飛び交うのがおしゃべりの醍醐味だと思うが、誰かに語りかけるようにして書いた44本のエッセーが、読者のみなさんのおしゃべりを開くきっかけになったらうれしい。

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