生命海流 GALAPAGOS

  • 生命海流 GALAPAGOS
    生命海流 GALAPAGOS
判型:A5判 / ページ数:256ページ / ISBN:9784255012414 / Cコード:C0095 / 発売日:2021/06/12

生命海流 GALAPAGOS

福岡伸一 定価: 2,090円(本体1,900円+税)

在庫: 在庫あり

「生命」「進化」とは何か?
福岡伸一が、 ダーウィンの足跡をたどり、生命の本質に迫る。

立ち読み(PDF)

絶海の孤島で繰り広げられる大自然の営みと進化の不思議を、
ユーモア溢れる文章と美しい写真で描き出す、ガラパゴス航海記。


「生命とは何か」を追求し続け、「生命は変わらないために、変わり続けている」という福岡伸一(生物学者)が、進化論の島・ガラパゴス諸島フィールドワークの中から、新たなる生命観を導き出す。

絶海の孤島に生息する奇妙な生物たちはどこから来たのか? 特殊な進化を遂げたのはなぜか? なぜ生物たちは人間を恐れないのか? 陸と海に分かれて生息するようになったイグアナ、飛ぶための羽を諦めたコバネウ……ガラパゴスの生物たちの謎を解き明かす。島の大自然を全身で感じながら、“進化の現場”と、その驚くべき生命の姿を生き生きと克明に綴った紀行ノンフィクション。



【書評】 朝⽇新聞(2021年07月24日) /評者: 須藤靖
【書評】 読売新聞(2021年08月18日) /評者: 尾崎真理子
【書評】 毎日新聞(2021年12月18日) /評者: 岩間陽子

WEB版 『生命海流GALAPAGOS』(noteにて連載中)

目次

ガラパゴスに行きたい—まえがきに代えて 
レンズの焦点—捨てる神あれば、拾う神あり 
「始まり」のための後日談 
登場人物 
旅の行程 

2020年3月4日 出航 
3月4日 フロレアナ島 
3月5日 イサベラ島 プンタ・モレーノ 
3月6日 イサベラ島 ウルビーナ・ベイ 
3月7日 ボリバル海峡 イサベラ島 タグス・コーブ 
3月8日 サンティアゴ島 

ガラパゴスで出会った生き物たち 

著者紹介

  • 福岡伸一
    生物学者。1959年東京生まれ。京都大学卒。青山学院大学教授。米国ロックフェラー大学客員研究者。サントリー学芸賞を受賞。『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)、『動的平衡』(木楽舎)など、"生命とは何か"をわかりやすく解説した著書多数。ほかに『福岡伸一、西田哲学を読む 生命をめぐる思索の旅』(小学館新書)、『迷走生活の方法』(文藝春秋)、訳書に『ドリトル先生航海記』(新潮文庫)、『ガラパゴス』(講談社)など多数。

ガラパゴスに行きたい—まえがきに代えて

ナチュラリスト宣言

調べる。行ってみる。確かめる。また調べる。
可能性を考える。実験してみる。
失われてしまったものに思いを馳せる。
耳をすませる。目を凝らす。風に吹かれる。
そのひとつひとつが、君に世界の記述のしかたを教える。
私はたまたま虫好きが嵩じて、こうして生物学者になったけれど、
今、君が好きなことがそのまま職業に通じる必要は全くないんだ。
大切なのは、何かひとつ好きなことがあること、
そしてその好きなことがずっと好きであり続けられること。
その旅路は驚くほど豊かで、君を一瞬たりともあきさせることがない。
それは静かに君を励ましつづける。
最後の最後まで励ましつづける。

これは、私が作った、自然を愛する者への言葉。いわばナチュラリスト宣言である。カミキリムシや蝶を求めて野山をさまよい、結局、何も採れずに帰った少年時代の日々の体験がもとになっている。でも翻って考えると、この感覚は研究者になったあとも同じである。試すこと。待つこと。そして諦めること。すべてはこれの繰り返しだった。

ガラパゴスに行きたい。これはナチュラリストとしての長年の夢だった。プロの研究者も、アマチュアバードウォッチャーも、7歳の虫好きの少年も、みんなナチュラリストであるという点では同じ。そして彼らはひとしく願う。生涯、一度でいいから、絶海の果てに位置するガラパゴス諸島に行って、溶岩と巨石に覆われ、絶えず波に洗われる岸壁に生息する、独自の進化を遂げた、奇跡的な生物を実際にこの目で見てみたいと。

ずっと昔からそう願ってきた。とはいえ、私の夢はもう少し手が込んでいた。ただ、観光客としてガラパゴスを見に行くのではない。今をさること200年近くも前の秋、はるかな航海の果てに、この群島にたどり着き、ここを探検したビーグル号と同じ経路をたどって島が見たかった。ビーグル号には、かのチャールズ・ダーウィンが乗っていた。後に、進化論を打ち立てて生命史に革命をもたらした人物。

しかし、そんなことはできるはずがない。ビーグル号の正式名称は、H.M.S.Beagle, Her(His) Majesty’s Ship. つまり女王(国王)陛下の船だった。全長27・5メートル、排水量242トン、実戦が可能な大砲6門を搭載、英国精鋭の軍人70余名の船員が乗船する本格的な軍艦だった。当然装備も資材も豊富に積まれていた。だからこそ自由自在な航路をとれたのだ。

そもそもビーグル号の密かな狙いは、世界中に散在する将来の軍事拠点を確認、調査、測量することだった。彼らと同規模の船を仕立てて、同じ旅を再現することなど不可能である。

当時、ダーウィンはまだ22歳。船長フィッツロイのコネで、たまたま随行を許された民間の客人だった。生物学に興味を持っていたとはいえ、あとになって『種の起源』として結実する進化論の構想は、何ひとつとして彼の心の中に準備されてはいなかった。

ひとくちに「ガラパゴス」といっても、そこは大小様々な島や岩礁が散在する群島である。名前のついている島は全部で123島、主要な島だけでも13島あるといわれており、それがおよそ関東地方くらいの広い範囲に分布している。

ダーウィンの乗ったHMSビーグル号は、1835年9月15日に、ガラパゴス海域東端のサン・クリストバル(英名:チャタム)島に到着した。その後、約1か月かけて、数少ない水源のある島、フロレアナ(チャールズ)島、6つの火山を擁するガラパゴス最大の島、イサベラ(アルベマール)島、イサベラ島と今も火山活動が激しい島フェルナンディナ(ナーボロウ)島のあいだの狭い海峡をくぐり抜けて、赤道線0度を越え、サンティアゴ(ジェームズ)島などに寄港し、調査と測量を行い、同年10月20日、次の調査地であるタヒチ島に向けて太平洋を西に進んだ。

ビーグル号は、タヒチ、タスマニア、ココス、モーリシャスなど、今から見ると高級リゾートめぐりをしているかのような航路をたどって、5年にわたる世界航海を行った。これは先にも記したとおり、ビーグル号の密かな使命が、大英帝国による世界制覇の野望に関わっていたからに他ならない。

少なくとも、ガラパゴス諸島の旅に関してだけでも、チャールズ・ダーウィンと同じ航路をたどって、彼が見たであろう光景を、彼が見たはずの順番で、訪れてみたい。いったいガラパゴスの何が、彼の目を見開かせ、彼の想像力を掻き立てたのだろう。それを追体験したかった。これが私の贅沢な夢だった。

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