小さな家のローラ

  • 小さな家のローラ
    小さな家のローラ
判型:A5判 / ページ数:271ページ / ISBN:9784255012162 / Cコード:C0095 / 発売日:2017/03/09

小さな家のローラ

ローラ・インガルス・ワイルダー 著 / 安野光雅 絵・監訳 定価: 2,750円(本体2,500円+税)

在庫: 在庫あり

世界 40カ国以上で翻訳
全米4100万部超のベストセラー
不朽の名作ドラマ『大草原の小さな家』の原作を
安野光雅が絵本に描きおろし。

立ち読み(PDF)

日本でも大ヒットしたアメリカのテレビドラマ・シリーズ『大草原の小さな家』の原作「大きな森の小さな家」を、安野光雅の絵と訳で描きおろし。緻密な描写と遊び心あふれる美しい絵と、わかりやすく親しみやすい日本語訳で、アメリカの西部開拓時代を生きた家族の、温かく力強い暮らしを忠実に描く。

「文化が違っても、暮らしの本質は変わらない。いろんな場所で、いろんな人が生活している。そこには人間のドラマがある。そういう人の暮らしを描き、絵からなにかを感じ、考えてほしい」(安野光雅)

──愛と思いやりと道徳心、不屈の開拓者精神が満ちあふれ、自然との共存、理想的な家族像は、世界のどの地域の、どの時代にも通ずる普遍的なものであることを優しく物語る。

著者紹介

  • 【著】ローラ・インガルス・ワイルダー
    1867年、アメリカ北部のウィスコンシン州に生まれる。
    1932年、西部開拓時代の体験をもとにした自伝的小説、『大きな森の小さな家』を発表。
    『大草原の小さな家』『プラム・クリークの土手で』などとあわせ、
    「小さな家シリーズ」として世界中で読まれてきた。
    テレビドラマの「大草原の小さな家」は、このシリーズをもとにしている。
    1957年、90歳で亡くなる。

    【絵・監訳】 安野光雅(あんの みつまさ)
    1926年、島根県津和野町に生まれる。BIB金のリンゴ賞(チェコスロバキア)、国際アンデルセン賞などを受賞。1988年、紫綬褒章、2008年、菊池寛賞、他を受賞。2012年、文化功労者に選ばれる。
    主な著作に『ふしぎなえ』「『旅の絵本』シリーズ(全8巻)」(福音館書店)、『故郷へ帰る道』(岩波書店)、『絵の教室』(中央公論新社)、『絵のある自伝』(文藝春秋)、『本を読む』(山川出版社)などがある。
    2001年、津和野町に「安野光雅美術館」が開館。2017年、京丹後市の和久傳の森に「森の中の家 安野光雅館」が開館する予定。

あとがき(一部抜粋)

もう、こんなにたくさんの絵のある本は描かないとおもいます。

基本的なことをいうと、文学は、挿絵とは無関係に成り立っています。挿絵に矛盾があっても不思議ではありません。ただし、説明図は別です。この本を例にすれば、ワナのしくみ、先込め式銃の構造、ドアの掛け金などを説明する図などは、言葉で説明することは大変なので、できる限り調べて入れるようにしました。文章で説明のむつかしいことも、図によれば一挙に解決するからです。

英日対訳の場合は、どうしても原文にそった日本語にしなければなりませんが、しかし、原文に忠実であればあるほど、わたしの言葉からは遠ざかってしまいます。そこで今回は、一字一句が正確な翻訳であることよりも、日本語として自然な表現を優先しました。

こういうと、わたしは英語がたいへん得意だ、とおもわれそうですが、せいぜい中学生の程度です。そこで、知人に協力してもらい、わたしは、疑問点をあげて検討したり、読みやすい言葉遣いにおきかえたりしました。

この本の原文はやさしいようでいて、むつかしく、むりにやさしくしようとすると、もっとむつかしくなります。そこのところを、日本の文化や日本語の感性に沿って、やさしくするように努めました。ただ、読みなれた日本語の文章の感覚からいうと、形容詞や同じ語句の繰り返しが多いことが気になりました。

開高健が「文章は形容詞から腐っていく」といっていた名言をおもいだします。

三重になっている形容詞を二重や一重にしたり、繰り返しの語句を少し省いたり、日本人にはなじみがなくて説明がややこしいところは、原文を損なわない程度で簡単にしました。優れた本でも、人によって趣味が違うとおもうほかありません。

これは、百五十年ばかり昔のアメリカの物語です。その国に生まれなくてはわからないほど微妙なことがらや専門的なことも多かったので、その疑問点については、英語圏のひとや専門家の知恵をかりました。

「ランプの灯油に塩を加え、爆発を防ぐ」

という、いまは聞いたこともない生活の知恵についてのくだりも、当時のアメリカの新聞記事などを探してきました。

このほか、寒冷地では室内側にも霜がつくこと、イヌは縄張り意識が強いこと、ミツバチの生態など、友人の竹田津実の知見に、おおいに助けてもらいました。かれは、いまは写真を主にしています。

捕ったシカでも飼っているブタでも、血の一滴まで無駄にしないアメリカの開拓者たち、つまりヨーロッパのひとびとの生活のありかたと、生き抜くための知恵と、そこに芽ばえた文化には頭が下がります。

この本での、紅葉した森のこと、雪に閉ざされる冬のことなど、四季のうつりかわりの描写はすばらしく、森で暮らした人でなければ書けない美しさと厳しさを感じました。

チーズやバターや燻製などをつくる仕事も珍しいとおもいました。そうしたアメリカのかつての生活が具体的に描かれています。雪国のひとたちが、夏の間にしなければならないことは、すべて厳しい冬をすごすためだった、といってもいい過ぎではないとおもいます。

しかしいくつかの、疑問もありました。

この本はローラの生活体験をもとにしたお話で、「茶色のカールと金色のカールのどちらが好きか、聞いてみなさい」と、お母さんがいう箇所は事実だということです、深い意味はないにしても、あれはお母さんの不用意ないいかただったとおもいました。お店の人が茶髪はほとんど無視しても、「お父さんも、おなじ茶髪だった」ということにわたしもすくわれました。

また「赤ちゃんのシカは撃たない。大きくなってからならいい」という考え方は、人間的な優しさなのか、それとも経済的計算の上なのかと考えると、わたしたち人間の側にとって大きい問題です。

それらは、文化の、全く違うところに生まれた、わたしの感想にすぎません。

これらの感想は無視して、この本を読んでいただければ、より、ローラのいうことが伝わるのではないだろうかとおもいます。

二〇一七年二月
安野光雅

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