往復書簡 無目的な思索の応答
往復書簡 無目的な思索の応答
又吉直樹 著 / 武田砂鉄 著
定価: 1,650円(本体1,500円+税)
在庫: 在庫あり
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「ここでしか書けない」
言葉の在庫を放出した。
言葉の世界にそれぞれ立ち向かう同年代の作家が、
一年半にわたって新聞上で交わした往復書簡。
それは、いわゆる「往復書簡」とはまったく異なる。
馴れ合いや戦略や俯瞰から遠く離れて、
記憶を掘り起こし、違和感を継ぎ足し、書くことについて考える。
流れから逸脱し、散らばった先でぶつかり合って、
思索が自由に泳いでいく。
「言葉への態度」をめぐる、個と個のあてどない応答の軌跡。
まえがき(武田砂鉄)とあとがき(又吉直樹)は書き下ろし。
「自分の名前で文章を書くということは、なにかを確定させるという意味において身体に文字を彫ることと似ている。
取り返しのつかないことになりかねないし、覚悟が必要な行為でもある」
……又吉直樹(あとがき)
「言葉を重ねていくと、意味が固まってくるものだけど、今回は、意味がただただ点在している感じが続き、生まれたり消えたりした。
それはもしかしたら、とても貴重なことだったのでは、と思っているのです」
……武田砂鉄(まえがき)
【本文より】
武田 極端な話をすると、ジャムの瓶を開けてもらったことで生まれた恋もあれば、ノリの瓶が開かなかったことで離縁を決めた事例もあるかもしれません。
又吉 たとえば、「流しそうめん」は考えようによってはわざわざいったん流すという無駄な行為でしかないのですが、でも楽しいんです。
武田 しょっぱい生姜焼きを「でしょー」と言われながら食べる。文章にもこういうことがあってもいいと思います。
又吉 僕自身、「世に迎合すると鈍る」などと思っていたのですが、「迎合」という認識が間違いで、起爆するための条件と捉えたらどうか?
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書評
二人の往復書簡は、最初から最後まで馴れ合わない、ほど良い距離がありながらも、
互いの言葉への態度を尊んでいるようでとても心地良い。
日々の違和感を鋭く感知しながら、不確かさ、偶然、揺れることを愛おしみ、
あちらこちらに記憶が散らばる。
奇跡的な、言葉をめぐる思索の軌跡を、私はこれからなんども読み返すだろう。
宮台由美子さん(代官山 蔦屋書店)
人と人とが二人で何かを作り上げる時、その関係は寄りかからず、甘えず、突き放さず、
しかしその底辺にはお互いへの静かなリスペクトが横たわる、こういうのが一番いい。
そんな二人の往復書簡。
人の背筋を伸ばすというよりも、背筋の芯を入れ替えてくれるような言葉に溢れている。
日野剛広さん(ときわ書房 志津ステーションビル店)
言葉として表に出ていなかったものを二人は言葉として暴き出し、そして、
またそれを自分として見出し、そしゃくするわけでもなく、ゆらゆらさせながら放置した。
暴き出された言葉は決して、快いものではなく、ほとんどが自らのとげになって残ってしまった。
怖いものみたさというかこの放たれた言葉を心待ちにしている自分がいた。
宙に舞って、ゆらゆらしている言葉・思考が自分の中でぽっかり浮かび続けている。
山中真理さん(ジュンク堂書店 滋賀草津店)
この作品(二人のやりとり)を読んでいると、記憶の底に沈んでいたカケラが浮かび上がってくるような感じをたびたび覚えました。
その中でも「夜に馴染む」はとっても腑に落ちました。というのも、私が住んでいる家の真裏には、とにかくまっすぐな国道が走っており、田舎なので22時頃ともなると辺りは暗く静かになります。そこへ現れるのです……歌うバイクの人が(笑)
なのでここに書かれてある“無責任に、自由に、夜に馴染んでいるようなのです。”は彼らを表現するのにピッタリな言葉だと感動すら覚えます。
小林裕子さん(丸善 広島店)
感動する話も爆笑ネタもない。けれどもやりとりは真理に深く潜っていくようにスリリングで、
一行一行を読むたびに脳内に鋭い光が差し込み、ビリビリと痺れるのを感じる。たのしい。
ほんとうにたのしいというのはこういうことだ。予定調和や馴れ合いや安易な共感のない世界。
こんな話しかしない飲み会があったら週3で参加したい。
花田菜々子さん(HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE)
往復書簡というクラッチで徐々に互いの回転数が擦り合っていくにつれ、
互いに投げかける個人的な記憶や思索/言葉が波紋となって徐々に影響し合い、
あたらしい記憶や思索/言葉が次々と引き出されるところに興奮を覚えました。
今井瑞穂さん(本の店 英進堂)
夜光虫が出てくる「偶然ってどこから」と「刺激と反応」、印象深かったです。
読んだばかりで時間がそんなに経っていませんが、あとからじわじわと効いてくる
遅効性を持った本であるような気がしています。
片山恭子さん(ときわ書房 千城台店)
文章ってその人の性格がわかるとよく言いますが、
この二人のやりとりは本当に「只者じゃない」二人の文章だなと感じました。
内容自体は何気ない日常のちょっとした事から始まったりしてるんですが、
あぁーそれがそうつながる~とおもわず感心してしまいました。
この本がもしかしたら二人の「素」なのでは!?
吉田彩乃さん(岩瀬書店 富久山店)
家族・友人・恋人なら親しさのまま直電やLINEなどでいいだろうし、仕事関係ならメールなどでの業務連絡ですむ。
同業他者だからこその「書簡」というやりとりで、相談したり、軽い取材を行ったりと気負ってないやり取りに感じられる(そういう印象を持たれるのは不本意かもしれないが)。
「ラベリング」はされたくないけど、「立ち位置はできるだけ明確にしたい時もある」という矛盾した欲求が垣間見え、「言葉・思考」で遊び楽しむお二人がうらやましく感じられた。
河野邦広さん(明林堂書店 南宮崎店)
二人の世界の間を、言葉を通じて心地良く揺蕩う。
そして、その端々のはっとした気づきに、思わず身体がぴりっと反応する。
果たしてこの後はどうなって、どこへ連れて行かれるのだろうか。
読み終えた後、尽きるとも知れないその先を、二人の眼を通して眺めてみたい気がした。
山本亮さん(大盛堂書店)
これはもはや思考のラブレターでしょう。
互いの駆け引きもありつつ刺激しあい、まるで長電話みたいにとりとめなく流れていくかと思えば、きちんといわゆる「オチ」があったり、あ、でもなかったり。どちらのも楽しく読めました。
藤井美樹さん(紀伊國屋書店 広島店)
37ページから38ページ「適度な刺激」というのが実は最近の私の仕事への原動力になっています。
SNSで知らない書店員さんのお手製POPや拡材を見ては「もっと自分も頑張ろう!」と刺激を受けています。
齊藤一弥さん(紀伊國屋書店 仙台店)
又吉さんが芥川賞をとってから創作一本に何故踏み切らないのかとずっと考えていたのですが、
武田さんの往復書簡からその一端は伺えた気がしました。
鈴木慎二さん(BOOKS隆文堂)
ゆらゆらと漂うようにあっちへ行き、こっちへ行く。
そんな思考を言葉にした、この書簡集は、私にとってはとても心地良いものでした。
手紙は小説以上に相手に「伝える」ものだからか?易しい言葉で書かれた文章がすっと入ってきました。
辻香月さん(大垣書店 イオンモールKYOTO店)
目次
武田砂鉄(以下、武田):まえがき
武田:声って
又吉直樹(以下、又吉):読んでない人からも批判されるのは僕くらい
武田:ああだこうだ
又吉:「今日、調子いいね」という呪縛
武田:夜に馴染む
又吉:妖怪ケンムン
武田:本音ベース
又吉:機嫌悪いわけじゃないよ
武田:(笑)の入れ方
又吉:リアルってなんや
武田:主観の操縦
又吉:えん
武田:偶然ってどこから
又吉:刺激と反応
武田:イケてる人
又吉:あいまいな記憶
武田:最近評判悪いよ
又吉:キスしたことある?
武田:早生まれだけど学年は一緒
又吉:松坂世代らしい
武田:不便を残す
又吉:「無駄」が楽しい
武田:マッサーヅマッサージ
又吉:「マタキチ」って呼ぶ人
武田:状況選択能力
又吉:「フリ」
武田:さびしさを鳴らす
又吉:得意げに「意味わからん」と言う人もいるし
武田:「でしょー」
又吉:楽はしない
武田:俯瞰と起爆
又吉:「自然」と「不自然」
武田:トリミング癖
又吉:削って語る
武田:池谷幸雄である必然性
又吉:パターン化された理屈
武田:接続の横柄さ
又吉:都合の良い接続
武田:街に転がる決断
又吉:会議の「流れ」
武田:偏愛の屍
又吉:ずるい
武田:斬新と言われても
又吉:悔しくてクワマン
武田:スリジャヤワルダナプラコッテ
又吉:初体験
武田:「面白い」を探す
又吉:好きなようにやる
武田:「好き」が揺れ動く
又吉:迷う
武田:イイ感じに思われる
又吉:結局、自分で考える
武田:終わらせ方って難しい
又吉:「終わり」にも続きがある
又吉:あとがき