先史学者プラトン

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    先史学者プラトン
判型:四六判変型 / ページ数:480ページ / ISBN:9784255010496 / Cコード:0095 / 発売日:2018/04/08

先史学者プラトン
紀元前一万年―五千年の神話と考古学

メアリー・セットガスト 著 / 山本貴光 訳 / 吉川浩満 定価: 3,080円(本体2,800円+税)

在庫: 在庫あり

戦争も、信仰も、アートも、先史時代に始まった

細分化された考古学に「測定できないもの」
を取り戻す野心的な試み。
大胆な議論をぜひ楽しんでもらいたい。
――國分功一郎さん

【プラトンが記したアトランティスとアテネの大戦争の痕跡が、先史時代に見つかる?】
【「定住革命」は、ザラスシュトラ(ゾロアスター/ツァラトゥストラ)による宗教改革だった?】

戦争も、信仰も、アートも、先史時代に始まった――
考古学の成果に依拠した、神話の大胆な読み換えによって、「文明以前」の人類世界を再構築する刺激的試論。

●「旧石器時代後期」のイメージを塗り替える
人間が人間らしくなったのは、「四大文明」や「ギリシャ・ローマ」からだと思っていませんか?

本書が紹介する考古学上の発見によると、旧石器時代後期(前2万年~1.3万年)から新石器時代(前8500年頃~)にかけて、すでに人類は動植物の飼育・栽培をおこない、ギリシャ・ローマに匹敵するような高いレベルの芸術を生み出し、記号を用い、航海し、交易していました。また、彼らの残した数々の宗教的シンボルは、どうやらメソポタミアからパレスチナ、ギリシャ・ローマまで、五千年以上の時をまたいで、遠く接続しているようなのです。

●「アトランティス」は単なるフィクションなのか?
プラトンは『ティマイオス』および『クリティアス』において、前九千年紀、アトランティスとアテナイとのあいだに地中海世界全体を巻き込む大戦争があったことを記しています。その時代にそんな文明がありえたはずがないので、フィクションだろうと考えられてきました。

しかし、先史時代の人びとがすでに我々につながる高い文化を持っていたならば、プラトンの物語を現実の人類史の足跡を保存したものとして真正面から受けとり、古代世界の理解に役立ててもよいのではないか?――これが本書の著者の提案です。
現にラスコーの洞窟画から「最古の都市」チャタル・ヒュユクまで、神話と考古学とのあいだには、さまざまな照応が見つかる、と著者は言います。

事実、「大戦争」の時期に次のことが見つかるのです――
・それまで平和な暮らしを営んできたヨーロッパ、アナトリア、中東、北アフリカの各遺跡で、突如として武器が増えはじめる。
・同時に、人類史上初の暴力による死者の集団埋葬が見つかる。
・さらにエリコ(パレスチナ)に、突如として壁をめぐらせた町と巨大な塔が出現する。
・ラスコー等の動物を描いた壁画に代わって、戦士を記念した壁画が生まれる。

●考古学の常識を覆すチャタル・ヒュユク遺跡(アナトリア地方南部、現在のトルコ共和国)
「大戦争」のあとの前七千年紀、考古学者が「途方もなく豊かで豪華な都市」と呼ぶほどの、驚くべき遺跡が現れました。その遺跡、チャタル・ヒュユクは、たくさんの祠堂(神殿)が、奇妙な壁画、雄牛の骨と漆喰でつくられた造形物、謎めいた古い彫像で飾られていました。それらは退廃と呼べるほどの繁栄をきわめたあと、突如として大火災に遭い、その後は規模が大きく縮小され、シンプルで明解なものに変わりました。
彼らはいったい誰で、彼らに何があったのでしょうか?

●なぜ人類が突如として定住したのか?
チャタルに大火災があったのと同じ頃、西アジアで遊牧生活をおくっていた人々が、それまでの安定した生活様式を捨てて、いっせいに定住をはじめました。この変化は先史学者にとって大きな謎でした。
ところが、この前七千年紀後半という年代は、アリストテレスらがザラスシュトラの生年として語った年代と一致するのです。断片的に残されたその教えを読み解くと、ザラスシュトラが古い信仰の改革者だったこと、また、農民を戦士の上に置き、農耕を宗教上の使命と考えていたことが見えてきます。

現代が長い新石器時代の終末期に位置するのだとしたら、ザラスシュトラの改革は我々にとって無関係ではありません。先史学が教えるのは、人類は先史時代から、何度も衰退と再生のサイクルを繰り返してきたということです。かつてない繁栄と自然破壊、文化の混淆を生きる私たちは、ローマやチャタル・ヒュユクの「同時代人」なのかもしれないのです。

目次

日本語版への序文 考古学と哲学――國分功一郎

はじめに

第一部 前八五〇〇年の戦争
神官の物語
前九〇〇〇年以前の地中海──南西ヨーロッパ
前九〇〇〇年以前の地中海──北アフリカとエジプト
前九〇〇〇年以前の地中海──パレスチナとギリシア
西方での戦争
東方での戦争
まとめ──順序・空間・時間

第二部 プラトンの物語と神話の並行性
人びとが親しんだギリシア神話
エジプト神話と考古学
サハラとシチリアの神話的芸術
黄金時代とインド=ヨーロッパ神話

第三部 新石器革命、第一期
 ヘルモクラテス
 ギリシアの考古学──前七五〇〇―五五〇〇年
 近東の先駆者──前七五〇〇/七三〇〇年
ザグロスの村落文化
 暗色磨研土器

第四部 チャタル・ヒュユク 前六二〇〇-五三〇〇年
「時ならぬ輝きと複雑さ」
Ⅷ層とチャタルのハゲタカという主題
チャタルにおけるヒョウの主題
チャタル・ヒュユクの絶頂期、Ⅶ層とⅥ層
再建のパターン

第五部 新石器革命、第二期
ザラスシュトラの背景と教え
イランの考古学──前五五〇〇-五〇〇〇年
ザラスシュトラの時代?
メソポタミアの考古学──前五五〇〇-五〇〇〇年
ハラフ文化の西方への影響


おわりに

附録A  プラトンの『ティマイオス』と『クリティアス』の関連箇所抜粋
附録B  放射性炭素14年代測定法
附録C  アジア流の芸術──「自然の本性」

参考文献、索引

著者紹介

  • [著者]
    メアリー・セットガスト

    カルフォルニア大学バークレー校とコロンビア大学で学位を得る。独立研究者としての主要な関心は旧石器時代から現代までの宗教と文化、特に宗教と農耕の並行性にある。著者に『先史学者プラトン――紀元前一万年―五千年の神話と考古学』(1986年/2000年)、『モナリザの髭』(2001年)、『ザラスシュトラが語るとき――新石器時代の文化と宗教の再構築』(2005年)がある。

    [翻訳]
    山本貴光(やまもと・たかみつ)

    文筆家・ゲーム作家。1971年生まれ。コーエーにてゲーム制作(企画/プログラム)に従事後、2004年よりフリーランス。著書に『文学問題(F f) 』(幻戯書房)、『「百学連環」を読む』(三省堂)、『文体の科学』(新潮社)、『世界が変わるプログラム入門』(ちくまプリマー新書)、『コンピュータのひみつ』(朝日出版社)など。共著に『高校生のためのゲームで考える人工知能』(三宅陽一郎との共著)、『脳がわかれば心がわかるか――脳科学リテラシー講座』(吉川浩満との共著、太田出版)など。訳書に、サレン/ジマーマン『ルールズ・オブ・プレイ』(ソフトバンククリエイティブ)、ジョン・R・サール『Mind――心の哲学』(吉川浩満との共訳、朝日出版社)など。

    吉川浩満(よしかわ・ひろみつ)

    1972年3月、鳥取県米子市生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。国書刊行会、ヤフーを経て、文筆業。関心領域は哲学、卓球、犬猫鳥、ロック、映画、単車など。

    著書に『理不尽な進化』(朝日出版社)、『脳がわかれば心がわかるか』(山本貴光との共著、太田出版)、『問題がモンダイなのだ』(山本貴光との共著、ちくまプリマー新書)ほか。翻訳に『MiND』(山本貴光との共訳、朝日出版社)など。

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