Weの市民革命

  • Weの市民革命
    Weの市民革命
判型:四六判変型 / ページ数:232ページ / ISBN:9784255012032 / Cコード:C0036 / 発売日:2020/12/15

Weの市民革命

佐久間裕美子 定価: 1,650円(本体1,500円+税)

在庫: 在庫あり

トランプ時代、パンデミック、ブラック・ライブズ・マター、大統領選……
いまアメリカで沸きあがる、「私たち」のムーブメント
ロングセラー『ヒップな生活革命』の“その先”のストーリー


金融危機後のインディペンデント文化の開花を描いた『ヒップな生活革命』から6年。
その間に出現したトランプ政権を受けて、「消費」を通じたミレニアルたちの運動が活発化した。企業は政治・社会的スタンスを明確にするようになり、「サステイナブル」に一段と取り組むようになった。「ジェントリフィケーション」の波を受けたブルックリンでも、インディペンデントが生き残るための創意工夫がより深化していった。
……ところに迎えたコロナウイルスとブラック・ライブズ・マター、そして大統領選。
それらは、以前からプログレッシブ(進歩主義的)な市民たちが求めてきた施策をさらに前進させた。「インターセクショナリティ(交差性)」はより強固なものになった。
このプログレスは今後、どこに向かっていくのか。そこには、どんなルーツがあるのか。
こういう時代に「物を買う(消費する)」行為をどう考えていけばいいのか。
共通するキーワードは「We(ウィ)」。いま「私たち」の力は、良くも悪くも、これまでになく大きなものになっている。
アメリカの変化は世界の変化を照らし出す。
20年以上にわたりニューヨークに住み、アメリカ各地を見続けてきたライターが、アメリカで沸きあがる新たなムーブメントのリアルな可能性と希望を、最前線から伝える。

自分以外の誰かのために、声を上げたり、
行動を起こすから、「We」なのだ。(本文より)

目次

目次:

はじめに

第1章 消費はアクティビズムになった
私が生きてきた時代のこと/オバマからトランプへ/時代は「ミー」から「ウィ」へ/怒れる若者たちと環境問題/プラットフォーム経済の光と影/未遂となったアマゾンの第二本部建設計画/進化する企業の社会的責任とコーズ・マーケティング/アクティビストCEO/従業員アクティビズム/プラットフォーム経済とギグワーカー/すべてはステイクホルダーのために/アパレル産業のサステイナビリティ/価値観を着る

第2章 インディペンデントは生き残れるのか
ブルックリンと高級化/「非営利」という生き残りの方法論/大企業とインディペンデントのいい関係/企業の傘下に入るか、小規模を守るか/循環する街の限界

第3章 コロナが前進させた社会のシフト
COVID-19がやって来た/ロックダウン下の食料調達/書き換えられるサプライチェーン/力を得る労働運動とステイクホルダー・キャピタリズム/変容する「都市」/コロナウイルスによる環境への作用/コロナ禍に再燃した「ブラック・ライブズ・マター」/BLMと消費アクティビズム/変わろうとするファッション業界/パンデミックが前進させた「パワー・オブ・ウィ」

第4章 自分ごとのサステイナビリティ
自分はどんな消費者でありたいか/「サステイナブル」が目指すもの/「リニア」から「サーキュラー」へ/肉食生活のオルタナティブ/誰から物を買うのか/「エシカル」に投資する/ブランドの価値はいま/物の価格を考える/物はどこからやって来るのか/素材に注目してみると/ファッションにおけるヴィーガニズム/回収・修復とアップサイクル/ひとりのステイクホルダーとして買い物をする

おわりに

著者紹介

  • 佐久間裕美子(さくま・ゆみこ)
    文筆家。1973年生まれ。慶應義塾大学卒業、イェール大学大学院修士課程修了。1996年に渡米し、1998年よりニューヨーク在住。出版社、通信社などでの勤務を経て2003年に独立。カルチャー、ファッションから政治、社会問題まで幅広いジャンルで、インタビュー記事、ルポ、紀行文などを執筆する。著書に『真面目にマリファナの話をしよう』(文藝春秋)、『My Little New York Times』(NUMABOOKS)、『ピンヒールははかない』(幻冬舎)、『ヒップな生活革命』(朝日出版社)、翻訳書に『テロリストの息子』(朝日出版社)。ポッドキャスト「こんにちは未来」(若林恵と。黒鳥社より3冊書籍化)、「もしもし世界」(eriと)の配信や『Sakumag Zine』(これまでに3冊)の発行、ニュースレター「Sakumag」の発信といった活動も続けている。

はじめに

 革命が中継されている。

 ギル・スコット・ヘロンの名曲「革命はテレビ中継されない」にかけて、「どうやら革命は中継されるらしい」と書いたのは、ニューヨーク・タイムズ紙の黒人ジャーナリスト、チャールズ・ブロウだった。いまアメリカで起きているのは、おそらく後世、歴史の教科書に記載されるだろうレベルの革命だ。

 2014年、金融危機以降にアメリカで起きた文化的現象を題材に『ヒップな生活革命』という本を書いて出したとき、「生活」と「革命」をつなげたのは、自分たちが生活を営む小さな世界で、自分の革命を起こすことが可能なのだと信じたからだ。とはいえ、自分が生きているあいだに歴史に残る規模の革命が起きるとは、夢にも思っていなかった。
 思えば、2019年は革命前夜だったのだろう。
 2010年代前半に起きたメイカーズ革命やDIYとインディペンデントの黄金時代は、ジェントリフィケーション(高級化)やインフレに圧迫されて、いつしか勢いを失っていた。海の水位が上がって都市が水没する、農作物が育つ表土が失われる、といった急速に悪化する地球の健康状態についての警鐘が日々鳴らされるわりには、現代人たちはライフスタイルを変えることができず、都会は汚れた空気に満ち、ストリートには大量のゴミがあふれていた。2017年にトランプ大統領が就任してからは環境規制が次々と撤廃され、オバマ大統領を勝利に導いた「連合」を形成した労働者や移民、女性やLGBTQ の人々に一度は与えられたはずの権利が、再び取り上げられる危機が迫っていた。トランプ大統領に許可を与えられたかのように、非白人や移民に対するヘイトクライムや警察による暴力事件があとを絶たなかった。スーパーリッチはさらに財を拡大し、都会はミドルクラス以下の庶民にはどんどん住みにくい場所になっていった。
 それと並行して、トランプ政権誕生以降に勢いを増した、平等や格差解消を目指し、従来の資本主義からの脱却を説くプログレッシブ(進歩主義的)な市民運動は、財力と発言力のあるミレニアルやジェネレーションZたちと連帯し、デジタル戦略と消費運動の二本立てで影響力を拡大しながら、大企業や政治に大きなプレッシャーをかけるようになっていた。
 そして、2020年がやって来た。

 中国の武漢で発生した新型コロナウイルスがまたたく間に世界各地に広がり、3月中旬から下旬にかけてアメリカの都市部のほとんどが徐々にロックダウンに入っていった。これまでの世界の人の流れが、そして経済・産業活動が「一時停止」された。
 アメリカの都会が終わりの見えないロックダウンに入って2カ月強が経った5月末、ミネソタ州ミネアポリスで、ジョージ・フロイドさんが殺される事件が起きた。白人の警察官が顔色ひとつ変えずに、無抵抗の黒人の首に足をかけ続ける映像がインターネット上に大拡散されたことで、2013年に生まれ、少しずつ勢いを増したり、ときには落としたりしながら続いていた「ブラック・ライブズ・マター(BLM)」運動が沸点に達した。
 いま革命が起きている、と思うのは、コロナウイルスによる経済の停止からBLMへの流れの中で、労働者や市民がついに立ち上がり、具体的な変革を要求し始めたからだ。「これまで」の世の中に足りていなかった、マイノリティの権利平等、医療アクセスの向上、企業の環境対策の施行など、ミレニアルのアクティビストや市民運動が以前から求めてきたことが、少しずつではあるけれど、着実に、実行に移されるようになってきたのだ。
 この革命は、なにも一昼夜で起きたことではない。脈々と続いてきた文化的現象や政治の出来事の積み重ねによって蓄積してきた市民感情が、コロナ禍と警察の不祥事によってついに爆発し、これまでなかなか動かなかった山が、急に音を立てて動き始めたのである。

 『ヒップな生活革命』は、地産地消やサード・ウェーブ・コーヒー、メイド・イン・USAといった衣食住に関する局地的なマイクロムーブメントをひとつの線で結び、2008年に世界を恐怖の底に陥れたリーマン・ショックをきっかけに、「より小さく」「より丁寧に」「より足元から」という方向にシフトした消費者マインドを解説しながら、「インディペンデントな生き方は可能なのだ」と結論づける本だった。
 「アメリカの消費者動向のいまを探る」というつもりで書いた本が、想像をはるかに超える数の人々の手に届き、それまで訪れたことのなかった日本の津々浦々での対話に私を誘ってくれた。東日本大震災という未曾有の惨事を経てそれまでの生き方を見直した人たちが故郷や新天地に作ったコミュニティを訪ねる機会が増え、アメリカで金融危機後に起きた動きと似たように、「より小さく」「より丁寧に」「より足元から」といった価値観を実践したり、昔からのやり方を復活させたり、進みすぎた「便利」によって起きたダメージを修復しようとしたりする姿に出会った。
 ニューヨーク、そしてアメリカ各地で見てきた「その後」と、日本各地を旅して発見したことを『ヒップな生活革命』の続編としてひとつの本にまとめる、という構想は、5年ほど前からあったものだ。その元になる原稿を、オンライン媒体「NewSphere」で2019年1月から9カ月にわたり、「Wear Your Values(価値観を着る)」というタイトルで連載させてもらった。
 振り返ってみるとこの連載は、大量生産・大量消費・大量廃棄の時代がやって来る前の世界を想像しながら、社会の最先端が向かう方向を見極めようとする、いたって複雑な作業になった。それを改稿している最中にも世の中はどんどん変わってしまい、結局、何度も書き直すはめになった。いまとなってはまったく原形をとどめてはいないが、新型コロナウイルスによって世界ががらりと変わり、おまけに革命が起きてしまったのだから仕方ない。

 この本は、いま起きていることのルーツとなる「過去」から始まり、2020年冬という「現在」で終わる。その向こうの「未来」を見通すことはできないにしても、「現在」起きている事象を見据えつつ、この先の広がりを想像しながら書いた。
 ひとつ言えることは、2001年に生じたアメリカ同時多発テロ事件、2008年に始まった金融危機が引き起こしたのと並ぶくらいの、またはそれ以上の規模の文化シフトが、いま起きているということだ。
 結局ボツにすることになった原稿を書いていたときは、増える一方の社会課題と加速する環境破壊を前に、とにかく「ヤバい」という気持ちを抱えていた。けれどいまは、以来さらに進行してしまった環境ダメージはさておき、パンデミックの発生によって、必要だった社会変革がついに進み始めたのだ、という気持ちでいる。
 革命には抵抗がつきものだ。人間という生き物は変化に対して恐怖を抱くものだし、世の中が変われば損をすると考える既得権益勢力が、社会の様々なレイヤーにおいて現状にしがみつこうとする。当然のことながら、変革を妨げようとするパワーもまた凄まじい。変革を起こそうとする力と、過去を維持しようとする力が、常に社会のどこかで衝突を繰り返している。
 この本に書いたことは、ニューヨークという都会の片隅にこれまで20年以上にわたって暮らし、アメリカ各地を旅してきた私が肌で感じる風景をまとめたものだ。別の場所に立っていれば、またまったく違う風景が見えるに違いない。
 日々、「あなたは革命のどちら側につくのですか?」という疑問を突きつけられているような気持ちで生きている。自分はいつでも変革、そして進歩の側に立っていたい。誰もが性的・人種的・宗教的アイデンティティに関係なく、安全な暮らしにアクセスできる社会を夢見るほうにつきたい。
 いったん始まってしまった雪崩を止めることはできない。
 革命は、自分が参加しようと、参加しまいと、起きるのだ。

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