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 ビジネス英語のプロ・高島康司、E-DICを使う(3)
 第3回 「英語は高度に文脈依存言語。英訳に耐える辞書か?」

★英文がこんなに身近に
 社会の国際化と電子メールの普及で、ビジネスでもプライベートでも英文を書く機会が格段に増えたことは間違いなかろう。手紙やファクスが主流だった 10 年前には考えられなかった頻度だ。海外からのジャンクメールなども含めると、毎日だれでも相当数の英文メールを目にしていることだろう。

 しかし、実際に英文で返事を書くとなると、そう簡単には書けないことにすぐ気づく。
 日本語と英語では表現のスタイルが大きく異なっているためで、この違いを認識していないと意味の通る英文にはなりにくいのだ。

 基本的に英語は、どんな状況でも物事の詳しい説明を要求する言語である。英語圏はどの国も多民族国家なので、価値観が異なる人々が互いに交流するためには、誤解のないように何でも説明するのがマナーだ。

★便利な日本語、文脈依存の英語
 これに対して日本語は、何でも一言で要約することを好む言語である。やたらと細かく詳しい説明は敬遠されるのが常である。一言で分かってしまう四字熟語などが大変に重宝されるのも、こうした理由からであろう。

 だが、日本語の熟語で英語にそのまま置き換えられるものは少ない。たとえば「人間関係」という四字熟語は、

  「職場における人間関係に問題がある」
  「今、人間関係で悩んでるの」
  「やっぱー、学校でも人間関係よくしとかないと、後で問題起こるよ」
  「生徒間の人間関係をよく考慮し、生徒指導に勤めなければならない」

 など、あらゆる状況や文脈でそのまま使えるが、英語ではそうはいかないのだ。

 英語は個々の文脈への依存が高い言語であることを常に意識していてほしい。いつでも「人間関係」→「human relations」と単に置き換えればいいかというと、そうではないのだ。無理にそうすると、変な意味になる。
 1対1の英訳語をいくら知っていても、書く際は十分ではない。
 個々の日本語の文脈に合わせて、それぞれ適切な英語の語句に置き換えていかなければならないのである。これが英文ライティングで最も難しいところだ。

★E-DIC はどう解決してくれる?
 E-DIC で試みに「人間関係」を検索すると、「human relations」 だけではなく、それぞれ異なった状況と文脈に応じて様々な表現に置き換えられた訳と解説を見ることができる。

 「小さい会社だから、人間関係で煮つまっちゃってね」
               ▼ ▼
 It's such a small company that personality conflicts have developed.

 「いや、学問の世界と言っても、けっこう人間関係がドロドロしてて大変なんだよ」
               ▼ ▼
 Actually, the academic world involves a lot of messy personal politics.

 など、日本語では同じ「人間関係」という熟語が
  ・personality conflicts
  ・personal politics
  ・interpersonal relationships
 さらに「how to get along」などの表現に動態的に置き換えられているのだ。

 冒頭に述べたように、電子メールが普及したいま、英文のライティングはどうしても避けて通ることはできない。そうした時代にE-DIC があれば心強い。
 PCインストールの辞書で、ここまで語句やフレーズの解説が充実しているものはほとんどないというのが、いつわりない実感だ。
 語句やフレーズの詳細にわたる解説はまさに驚きである。

 このような辞書を発売前から試用させてくれた朝日出版社には感謝したい。

(たかしま・やすし) 北海道札幌市に生まれる。早稲田大学卒業後、大手語学学校で教材・コースの開発や講師研修、企業研修等を担当。現在、企業向けに語学および IT 関連の研修、コンサルティング業、通訳業のほか、「ヤスの英会話」を主宰。
著書: 『CD-ROM付き 英文ビジネスレター実用フォーマットと例文集』 『実践英文ライティング入門』 『CD-ROM付き 音声読み上げソフトで練習する速読即解英文リーディング』 『CD-ROMを使った英会話「英訳」トレーニング』 (以上 ベレ出版)
『英文 e-mail実践ライティング講座』 (ヒューマンアカデミー)
『少し使える人の「確実に意思が伝わる英会話」トレーニングブック』 (明日香出版社)
『その英語 ネイティブはゼッタイ使わない!』 (あさ出版)