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 英語教育のプロ・磐崎弘貞、E-DICを使う
 第1回 「語彙の着目すべきポイントとは」

 筆者は、大学で英語を教えております。これには、読む・聞くといった英語のインプットの側面と、書く・話す(プレゼンする)といったアウトプットの面が含まれます。いずれの場合も、英語の語彙に関していうと、留意すべき点はほぼ共通しています。

 英語のインプットの際には、内容に加えて、後述するように、こうした英語語彙の使い方も観察し、アウトプットにおいては、そうした観察と辞書等から得た情報を活用することが英語力アップに必要になってきます。

 では、そうした英語語彙の何に注目するかというと、以下のような点になります。

★【コロケーション】
 語と語の慣用的・意味的なつながりのことです。coffee という単語は誰でも知っていますが、「濃いコーヒー」を何と言うかご存知ですか? strong coffee と言います。でも、powerful coffee とは言えません。

 では、「コーヒーを出す」はどうでしょう? serve coffee となります。「傘」だって、umbrella と知っているだけでは実用にならず、「傘を差す/たたむ」と表現できなくてはなりません。日本語の「差す/たたむ」に惑わされますが、open / close an umbrella と言えればOKです。

★【文法的型】
 英単語には、それぞれ独自の文法的な型があります。動詞ならば、それを「動詞型」と呼びます。たとえば、want ならば、I want you to call me.(私に電話してね)のように、「want+名詞+to 不定詞」という型を取れます。
 でも、suggest を使うと、
 × I suggest you to leave now.(もう出発しなさい)
 とは言えません。that 節を使って、
 I suggest (that) you leave now.
 とすればOKです。

 形容詞にも型があります。
 It is true she divorced him.(彼女が彼と離婚したのは本当だ)
 とは言えますが、同じく仮主語 it を使って、
 × It is sure she divorced him.(彼女が彼と離婚したのは確実だ)
 とは言えません。
 I'm sure she divorced him.
 ならばOKです。

★【事物の説明/パラフレーズ】
 これは、事物や概念を英語で説明したり言い換えたりするスキルのことです。たとえば、「傘」を an object to protect yourself from rain とサラリと説明できるように練習します。これが「説明練習」で、これによって、特定の単語を知らなくても、説明・定義することで意思疎通が可能になってきます。

 もう1つがパラフレーズ(言い換え)です。
 This shirt is conducive to active movements.
 (このシャツは、活発な行動の助けとなる)
 というちょっと難しい表現を、「このシャツは、活発な活動にはいい;これなら活発に動ける」と解釈し、
 This shirt is good for active movements.
 You can move actively in this shirt.
 のように言い換えます。いずれも、英英辞典を活用することで、うまく練習ができます。

 このような語彙のポイントに注目し、日ごろ学生たちには練習をさせているわけです。当然、それには、いろんな辞書情報を活用しています。

 そんな折、朝日出版社から『E-DIC』という CD-ROM 辞書が出たので、使ってみることにしました。
 次回、その実践報告をしてみたいと思います。


(いわさき・ひろさだ)徳島県生まれ。筑波大学大学院修士課程修了。1996-97 年に英国バーミンガム大学研究員。現在、筑波大学大学院助教授。専攻は英語教育学・辞書学・コーパス言語学。主な著書に『英英辞典活用マニュアル』 『続・英英辞典活用マニュアル』 『新学習指導要領にもとづく英語科教育法』<共著>(以上、大修館書店)、『英語 辞書力を鍛える』( DHC )。連載は「辞書 GAKU 事始」( Asahi Weekly 紙第3週、オンライン版あり)、「和文英訳演習室」( 『英語教育』大修館書店、奇数月、共著)。