読者が効果を実証!初公開!英語力がグンと伸びるマル秘勉強法

イラスト:タラジロウ

ディクテーションを継続してTOEIC980点を達成
岩本由加里さん(東京都)

TOEICのスコアが800点台後半くらいになると、そこからさらに伸ばすには大きな壁を乗り越える必要があるようだ。岩本由加里さんは『CNN English Express(EE)』のディクテーションを続けることでその壁を打ち破り、980点を達成した。岩本さんのディクテーションの具体的方法とは?

TOEICのスコアが800点台後半から伸び悩んでいましたが、約1年後に980点となりました。そのときのリスニング力アップを重視した勉強方法をご紹介します。

■ 大好きな「アンダーソン・クーパー」から取りかかる

EEが届くと最初に「アンダーソン・クーパー360°」を聴きます。クーパー氏のファンなので、最初にこの番組が取り上げられた時は非常にうれしかったものです。わからない単語、聴き取れないフレーズがかなりありますが、この番組を聴く時はパズルを解くような気分で聴いています。取り上げる内容がいつも非常に興味深いものであるため、とにかく何を話しているのか知りたい!という気持ちになります。何度も繰り返し聴いて、どうしてもわからない個所はテキストを見て確認し、再び、音を確認するために数回聴きます。この作業をしばらく続けて、もういいだろうと思えたら、他の強化編、実践編へ進みます。テキストの後ろから進めていくようになってしまうのは、興味を引かれるテーマが多いからです。

■ ウォーミングアップ編でディクテーション

強化編、実践編で「アンダーソン」同様に聴き取りに重点を置いた練習を終えると、ウォーミングアップ編のショートニュースを使ってディクテーションをします。非常に短いため、ディクテーションもあっという間に終わってしまうと思われるかもしれませんが、1語1句漏らさず正確に聴き取り、書き起こすというディクテーションの難しさは、想像をはるかに超えています。EEのCDをざっと聴いて「ウォーミングアップ編のショートニュース程度なら、なんとなく聴き取れる」と思っている方が多いのではないでしょうか。実際にディクテーションをやってみると、いかに自分の聴き取りが甘いか、理解できていないかが一目瞭然となります。
英語の読解力があるのに聴き取りが苦手という場合の最大の原因は、単語やフレーズなどに対して自分が想定している音と、実際に発音される音が違うことにあると思います。また、単語単位で発音してくれれば理解できるのに、フレーズとしてほかの単語に続けて発音されると最初と最後の音が変わるため、通常のネイティブ・スピードの英語が聴き取れないという事態に、私も苦労しました。「英語が得意だと思っていたのに、アメリカで全く英語が通じなくてがくぜんとした」という巷でよく耳にする話を私自身も体験しましたが、これは想定している音と実際の音が異なるため、「聴き取れない、話しても通じない」ということになるのだろうと思います。

■ ディクテーションに最適なEEのショートニュース

この音の認識のずれ矯正に非常に効果的なのがディクテーションです。EEのショートニュースがディクテーションに最適なのは、(1)実際にアメリカで放送されているネイティブ向けのニュースであり、分野も多岐にわたること、(2)毎日、ショートニュース1つのディクテーションなら、忙しい人でもそれほど負担にはならないこと、そして(3)トランスクリプトがあること、です。できれば、オリジナル・スピードの後に録音されている非常に明瞭なリピート部分は、オリジナルのネイティブ・スピードではこれ以上どうしても聴き取れないという程度まで書き起こしが終わった後に初めて聴くことをお勧めします。そうすることにより、ネイティブ・スピードの英語の音が単語単位で覚えていた発音からどれだけ変化するかがよくわかるからです。
これが自分の100%!と思えるところまで書き起こしが終わったら、トランスクリプトと見比べて赤ペンで修正します。修正が終わったら、聴き取れなかった音が正解の通りに聴こえるようになるまで繰り返し聴きます。どうしても正解の通りに聴こえない場合には、このフレーズはこのような音なのだと耳に覚えさせればいいのです。最初のころは四苦八苦することになるかもしれませんが、正解率が上がると意欲もわき、今日はもう1つやってみようかなとか、長めの「実践編」のニュースにも挑戦してみようかと欲も出てきますし、口語英語のルールや、ネイティブでないと聴き逃してしまう(というか本当は発音していないのではないかとさえ思われる)ifやwhile、where、I meanといった文の接続の役割を果たす音にも慣れてきます。
「BGMのように英語を流しっ放しにすれば、音に慣れてリスニング力もアップ!」というような教材の広告もあるようですが、これから言葉を覚える幼児であるならともかく、ある程度日本語運用能力が備わってからでは、「英語の音に慣れる」ことはできても、その内容を瞬時に理解するようになるには、1つ1つの音を言葉として確認する作業が絶対不可欠です。ディクテーションのメリットはリスニング力向上のほか、うまく聴き取れない場合、「文法ではここにはこの単語がくるはず」というアプローチをするようになるため、文法も身についてくることです。

英文週刊誌の精読で語い増強

もう1つ、リスニング力の向上に不可欠なのが語いを増やすことです。お勧めは、日刊の英字新聞ではなく、週刊の英文雑誌など、1つの話題に数ページを割り当てている雑誌を、斜め読みや多読ではなく、テーマを絞って精読を続けることです。興味を引く記事を選び、わからない単語は丁寧に調べます。これも最初は1ページを読むのに辞書を引きっぱなしで、膨大な時間がかかるものですが、継続することで、必ず出てくる決まり文句や、リスニング時に苦労する固有名詞、そして知ってさえいればリスニングがとても楽になるイディオムに慣れてきます。そうすると、そのテーマのニュースをいきなり英語で聴いても、バックグラウンドがあるため比較的スムーズに理解できますし、それまでなら書き起こしてトランスクリプトと見比べてから初めて気づいていたような発見についても、聴いている段階ですでに「あのイディオムはこんなふうに使うのか!」とひらめく、目からウロコのような体験がよくあります。
リスニング力がアップし始めると、初めて耳にする(もしくは想定していた音と違う)単語により多くのエネルギーが集中できるので、「点が結ばれて線になる」というのか、向上スピードが倍増するように感じられます。これからであれば、アメリカ大統領選挙の特集がしばらくは組まれるはずですから、選挙関連の単語や固有名詞を習得するにはチャンスだと思います。

■ 明確な目的を持ち、勉強を楽しむこと

以上が、私の勉強方法です。実は自分で考案したものではなく、お世話になっている通訳学校の先生方から伝授されたものです。海外のニュース番組を見るのが好きで、通訳を介さずに理解したいと思い、英語を勉強しています。帰国子女でもなく、リスニングに致命的な問題があった私に、先生が教えてくれた勉強方法が「とにかくディクテーションを続けること」でした。TOEICのスコアを上げることを意識した勉強ではなく、また、980点を取ったTOEICでは、スコアが900点手前でさまよっていたころと比べて手ごたえをそれほど感じなかったので、送られてきたスコアを見てびっくりしたのですが、勉強方法が間違っていなかったのだと実感しました。
語学の上達は、明確な目的とどれだけ勉強を楽しめるかということにかかっていると思います。私はニュース番組が好きなため、このような勉強方法が非常に自分に合っていると思うのですが、たとえば海外本社で働いてみたい!とか、ハリウッド映画ファンならアメリカで思う存分映画を見たい!とか具体的に目標を決めれば、自分に一番合った勉強方法が見つかるはずですし、英語の勉強が苦しみではなく楽しみになります。
将来は放送通訳をやってみたいという夢があり、英語の聴き取りももちろんのこと、限られた時間内で適切な美しい日本語を訳出できるようになることも必要なため、まだまだ私の勉強は終わりそうにありません。