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TED Books


恋愛を数学する
恋愛を数学する

ハンナ・フライ
森本元太郎 訳

恋愛に潜むパターンを、数学が解き明かす。
あらゆる自然現象にルールがあるように、人間の恋愛もパターンに満ち溢れている。
ならば、数学の出番。
恋人の見つけ方から、オンラインデートの戦略、結婚の決めどき、離婚を避ける技術まで、 人類史上もっともミステリアスな対象 = LOVE に、統計学やゲーム理論といった数理モデルを武器にして挑む。
イギリス BBC などで合うとリーチ活動に励む数学者が、人生の一大事に役立つ驚くべき知見を引き出しつつ、「数学と恋愛する」楽しさをも伝える。

2017年2月20日発売
B6判変型/224ページ
本体1,300円+税

各オンラインショップにてご購入いただけます。
Amazon.co.jp

本書のインスピレーションとなった17分間の講演は、TEDのウェブサイト TED.com で無料で見ることができます(日本語字幕あり)。



RyanLash
ハンナ・フライ(Hannah Fry)
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)高等空間解析センター所属の数学者。数理モデルを用いて、暴動・テロから貿易・ショッピングまで、人間のさまざまな行動パターンを研究。くわえて、UCL のアウトリーチ活動員として、劇場、パブ、学校で数学の面白さを伝えている。BBC の国際 YouTube チャンネルの司会者のひとりでもあり、イギリスのテレビ・ラジオ番組に定期的に出演している。ロンドン在住。幸運にもちょうど 38% の時期に出会った夫のフィルと暮らす。結婚式の準備のときに使った Python コードが残っており、リクエストに応じて配布可能。Twitter アカウントは@FryRsquared





森本元太郎(もりもと・げんたろう)
1974年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻修了。博士(学術)。理化学研究所生命システム研究センター技師。専門は複雑系の数理、分子シミュレーション。訳書に『現れる存在 脳と身体と世界の再統合』(監訳、NTT出版)。



奇跡をマネジメントする 円城塔

 人間の生は奇跡に彩られている。
 誕生の神秘にはじまり、死の秘密に鎖される。出会いがあり別れがあって、親しみをおぼえ、喧嘩をし、さまざまな感情の震えが起こる。ひとしずくの露が葉に落ちるのも一つの奇跡で、この世が存在することも、あなたが存在することも、あの人がそこにいることも、大いなる奇跡の一つである。
 その仕組みは精妙でいまだ人智の及ぶところではない。
 人を幸せにする奇跡があるならば、人を不幸にする奇跡もあるはずだ。誰かを幸せにする奇跡が、他の多くの人々を不幸にすることもあるかもしれない。このあたりから話はどうも不穏になってきて、奇跡の力にも限界があるような気配がただよってくる。
 人との出会いや心の動きが何か奇跡的なものであるのはよいとして、その奇跡はしかし日常的に起こっているはずである。露を落とすのさえも奇跡なら、奇跡は至極忙しい。もっと重要なことには、この意味の奇跡は誰か特定の人物だけに起こるものではなくて、誰にもみな平等に起こりうる。そうでなければ甲斐がない。
 さてすると、この奇跡を統計的に扱うことはできないのかと考えるのは自然であり、なにも奇跡を貶めようというのではない。奇跡の尊さは尊さとして、個人的な感動は括弧の中に入れてしまって中身は問わずに扱うことができはしないかということになる。

 さしあたり、多くの人の心をひきつける奇跡の中で大きな影響力を誇るのは恋愛である。
 恋愛を科学するというテーマは新しくて古い。
 これが恋愛占いということならばもう、起源さえもがよくわからない。占いは別に、誰かがてきとうに気分で物を言うのではなく(そういう場合もないではないが)、何かの世界観にしたがって行く手を予想する方法である。世界は何かの法則にしたがっており、その流れを読んで結果を見る。ただしその世界観には、時代ごとに優勢なものとそうではないもの、かつては信じられていたが無効とされるようになったものが含まれる。地球が平らであると信じられていた時代の占いを現代人が信じる理由はほとんどない。
 科学は、未来を予測するという観点からすると占いである。ただし、実験と照合しながら根拠となる理屈を変化させていくところを特徴とする。予測がはずれた場合は、理屈の方を更新する。どういう結果が出た場合にその理屈を正しいとし、どんな結果の場合には誤りとするかは、科学と名乗る上で重要である。予測と結果の比較対象を繰り返すがゆえに、科学のもたらす世界観は頑丈だ。
 例えば本書の第4章「オンラインデート」には、デートサイトのアルゴリズムが解説されているのだが(だから本書を読んだあなたはすぐにでもデートサイトを立ち上げることができる)、デートの組み合わせを提案する理屈が間違っていれば、サイトは潰れる。結果が悪ければ理屈を更新する必要がある。そのあたりが自分の直観にしたがって見合いを世話してくれる親戚などとは大きく異なる。

 本書のユニークさは、恋人探しから恋愛がはじまり、結婚を経て末長く幸せに暮らすという流れを順番に追っていくところにあって、お急ぎの方は自分が今直面している段階から参照していただくとよい。つまみ読みでも平気だが、実用性を重視する向きに第7章は不可欠なのでお見逃しなく。「運命の人を見つけるまでに、何人と付き合うのが合理的か?」という問いは、人生設計においてとても重要なものとなりうる。

 本文より先にこの解説を読んでいる人が一番知りたいはずの問いに答えておこう。
 本書を読むと、恋人ができ、幸せな恋愛生活を送ることができるのか?
 答えは「その可能性は高くなる」となる。それとも「可能性は高くなる可能性が高い」の方が適当かもしれない。意外に「可能性が高くなる可能性は低い」となることもありうる。「あなたがいくつもの人生を生きることができるなら、答えはイエス」というくらいがよいかもしれない。
 残念ながら、科学には前提や条件がつきもので、すっぱりこうだという答えが出ることは滅多にない。逆に、何かを前提なしに断言する者は信用できないとするのが科学的な立場である。
 しかも相手は奇跡である。
 奇跡的な出来事に遭遇する確率をあげる方法が存在するとしたならば、それこそが奇跡的なことではないか?

えんじょう・とう 作家。1972年札幌生まれ。SF、純文学など分野を問わず活動。研究者時代の専攻は物理学。代表作に『Self-Reference ENGINE』(フィリップ・K・ディック賞特別賞)、『道化師の蝶』(芥川賞)など。








RyanLash
TEDブックスは、大きなアイデアについての小さな本です。一気に読める短さでありながら、ひとつのテーマを深く掘り下げるには充分な長さです。本シリーズが扱う分野は幅広く、建築からビジネス、宇宙旅行、そして恋愛にいたるまで、あらゆる領域を網羅しています。好奇心と学究心のある人にはぴったりのシリーズです。TEDブックスの各巻は関連するTEDトークとセットになっていて、トークはTEDのウェブサイト「TED.com」にて視聴できます。トークの終点が本の起点になっています。わずか18分のスピーチでも種を植えたり想像力に火をつけたりすることはできますが、ほとんどのトークは、もっと深く潜り、もっと詳しく知り、もっと長いストーリーを語りたいと思わせるようになっています。こうした欲求を満たすのが、TEDブックスなのです。




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